「推薦入試は内申で決まる」
高専の推薦選抜について、よく言われることです。ただ、これがどこまで本当なのかは学校によってまったく違います。
募集要項に配点が数値で書かれている22校を調べたところ、合計点に占める調査書(内申)の割合は5%から90%まで開いていました。中央値は60.5%です。
内申に自信がある人にも、不安がある人にも、どの学校を受けるかで結果が変わるということです。
すぐ分かる結論
- 調査書の比重は学校で全然違う。最も高い神戸市立高専で90%、最も低い神山まるごと高専で5%。
- 中央値は60.5%。多くの学校で、推薦の合否の3分の2は内申で決まります。
- 半々の学校もある。函館・東京都立産業技術は調査書と面接等が500点ずつです。
- 推薦でも学科試験がある学校がある。松江は数学の筆記試験200点を課します。
22校の調査書の比重
| 学校 | 調査書 | 学科試験 | 面接等 | 合計 | 調査書の比重 |
|---|---|---|---|---|---|
| 神戸市立高専 | 1,100 | — | 125 | 1,225 | 90% |
| 岐阜高専 | 180 | — | 36 | 216 | 83% |
| 香川高専 | 135 | — | 30 | 165 | 82% |
| 苫小牧高専 | 315 | — | 90 | 405 | 78% |
| 一関高専 | 250 | — | 90 | 340 | 74% |
| 宇部高専 | 140 | — | 50 | 190 | 74% |
| 釧路高専 | 60 | — | 30 | 90 | 67% |
| 呉高専 | 270 | — | 135 | 405 | 67% |
| 熊本高専 | 135 | — | 70 | 205 | 66% |
| 高知高専 | 65 | — | 35 | 100 | 65% |
| 秋田高専 | 175 | — | 100 | 275 | 64% |
| 佐世保高専 | 135 | — | 100 | 235 | 57% |
| 大阪公立大学工業高専 | 130 | — | 110 | 240 | 54% |
| 函館高専 | 500 | — | 500 | 1,000 | 50% |
| 鈴鹿高専 | 135 | — | 135 | 270 | 50% |
| 奈良高専 | 100 | — | 100 | 200 | 50% |
| 松江高専 | 335 | 200 | 135 | 670 | 50% |
| 東京都立産業技術高専 | 500 | — | 500 | 1,000 | 50% |
| 新居浜高専 | 90 | — | 90 | 180 | 50% |
| 津山高専 | 175 | — | 200 | 375 | 47% |
| 大分高専 | 25 | 30 | 30 | 85 | 29% |
| 神山まるごと高専 | 20 | 50 | 330 | 400 | 5% |
満点の大きさは学校ごとの設計なので、校同士で点数そのものを比べても意味がありません。見るべきは比重(右端)です。
読み取れること
1. 内申がほぼ全て、という学校が実在します
神戸市立高専は調査書1,100点に対して面接125点で、比重は90%です。面接で逆転できる幅は、設計上ほとんどありません。推薦を狙うなら、内申の基準を満たしているかどうかがそのまま結果に近い学校です。
岐阜83%・香川82%・苫小牧78%も同じ傾向です。
2. 逆に、内申をほとんど見ない学校もあります
神山まるごと高専は調査書20点で、比重はわずか5%です。代わりに面接・ワークショップ・課題レポートなどが330点を占めます。中学校の成績よりも、その場で何を考え何を作るかを見る設計です。
内申に不安があるが挑戦したい、という受験生にとっては、この差は決定的です。
3. 「半々」に設計している学校があります
函館・東京都立産業技術は、調査書500点と面接等500点をきっちり半分ずつに置いています。函館の面接等には作文と自己推薦書が含まれます。
内申が届いていなくても当日の出来で埋められる余地がある、という意味で、90%の学校とはまったく性格が違います。
4. 推薦でも学科試験がある学校があります
推薦=学力試験が免除、と思われがちですが、そうでない学校もあります。
- 松江高専は数学の筆記試験200点を課します(合計670点のうち30%)。
- 神山まるごと高専も学力試験50点を含みます。
「推薦だから筆記対策は不要」と決めてかかると足をすくわれます。
もう一つの差:同じ「内申」でも計算方法が違います
比重だけの話ではありません。調査書の点数をどう計算するかも学校ごとに違います。ここには2つの軸があります。
軸1:どの学年の成績を見るか
| 見る学年 | 学校 |
|---|---|
| 1年から3年まで | 香川、佐世保、苫小牧 |
| 2年と3年だけ | 神戸市立、岐阜、一関、熊本、奈良 |
1年生の成績を見ない学校があります。 熊本は「第2学年の評点の和に、第3学年の評点の和の2倍を加算」、一関と奈良も第2・第3学年のみです。
1年生のときに成績が振るわなかった受験生にとって、これは小さくない違いです。逆に、1年から安定して取れている人は、3学年を平等に見る学校(香川・佐世保)でその積み重ねが効きます。
軸2:3年生の成績をどれだけ重くするか
学年に重みを付ける学校では、3年の比重が大きくなります。
- 神戸市立 — 中学2年時を3倍、3年時を7倍。3年の成績が全体の7割を占める計算です。
- 苫小牧 — 1年と2年を2倍、3年を3倍。
- 熊本 — 2年をそのまま、3年を2倍。
神戸市立の「3年時を7倍」は22校の中でも突出しています。 比重90%という数字と合わせると、この学校の推薦は「中学3年の成績でほぼ決まる」と言えます。
軸3:教科に重みを付けるか
9教科を平らに足す学校がある一方、理数系を重くする学校もあります。
- 神戸市立 — 数学・理科・英語・技術家庭を3倍、国語・社会・音楽・美術・保健体育を2倍。
- 津山 — 数学・理科の評定を2倍。
- 高知 — 第2学年は数学・理科・外国語、第3学年は数学が特に重い。
数学・理科が得意で実技教科が苦手、という受験生は、この3校では相対的に有利になります。逆に、実技教科で稼いでいるタイプは、9教科を平等に見る学校のほうが向きます。
つまり「内申点」は1つの数字ではありません
同じ通知表でも、学校が違えば換算後の点数は変わります。「内申◯◯だから受かる/落ちる」という一般論が成り立ちにくいのは、この計算方法の違いがあるためです。
志望校が決まっているなら、その学校の募集要項に書かれた算出方法を読むのが確実です。当サイトの各校ページにも、確認できた範囲で算出方法を載せています。
注意:これは58校のうち22校の話です
当サイトが把握している範囲で、推薦選抜の配点を数値で公表しているのは22校です。残りの学校は「調査書、面接等の結果を総合して判定する」といった書き方で、点数の内訳を示していません。
点数を公表していない12校でも、内申が効かないという意味ではありません。比重が分からないだけです。志望校がこちら側にある場合は、中学校の先生を通じて過去の合否の傾向を聞くなど、別の手がかりを探すことになります。
配点を公表しているかどうか自体が学校の方針なので、「公表していない=不利」ではない点にもご注意ください。
出願は12月上旬から。いま何をすべきか
多くの高専で、推薦選抜のWEB出願は12月上旬に始まります。たとえば令和9年度入試では、函館高専が12月7日から、久留米高専が12月4日からです。
この記事を読んでいる時期が秋なら、内申はほぼ確定に近づいています。だからこそ、ここから変えられるのは「どの学校に出すか」のほうです。
- 内申が強いなら — 比重の高い学校(神戸市立・岐阜・香川・苫小牧)ではその強みがそのまま効きます。
- 内申に不安があるなら — 半々の学校(函館・都立産技)や、面接等の比重が高い学校のほうが、当日の準備が結果に反映されます。
- 筆記に自信があるなら — 松江のように推薦でも学科試験がある学校は、その力を推薦の段階で使えます。
推薦の仕組み全体(出願条件、面接の内容、不合格時の学力選抜へのスライド)は高専の推薦入試ガイドにまとめています。この記事はその中の「配点」だけを掘り下げたものです。
次のアクション
※配点は各校の募集要項(令和8年度・令和9年度)から当サイトが転記したものです。年度によって変わることがあります。出願前に必ず志望校の最新の募集要項でご確認ください。





