高専みらい
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学生生活・・更新 2026-10-17・約11分で読めます

高専の留年率・退学率のリアル|公表データで確かめる「本当のところ」

「高専は留年しやすい」は本当か。まず正直に言うと、全国の高専の留年率を集計した公表データは存在しません。一方、中途退学率は文部科学省が毎年公表しており、令和6年度は2.08%。高校の1.4%と並べて、確かめられることだけを解説します。

目次
  1. 最初にお断り: 高専の「留年率」の全国統計は存在しません
  2. 確かめられること: 中途退学率は年2.08%
  3. 「何年生が危ないか」——ここから先はデータではありません
  4. 「赤点は60点未満」は全校共通ではありません
  5. 留年した場合の学費と、就学支援金の落とし穴
  6. 「高専中退=中卒」は誤りです
  7. 留年を避けるために現実的にできること
  8. まとめ
  9. 出典

「高専は留年しやすいって本当?」 「クラスの3割が留年するって聞いたけど、大げさじゃないの?」 「もし留年したら、学費はどうなるの?」

高専(高等専門学校)への進学を考えるとき、保護者や受験生がいちばん不安に感じるのが「留年」と「退学」です。ネット上には「クラスの3割が留年する」「卒業できるのは半分だけ」といった話も流れています。

この記事では、公表されている統計で確かめられることと、確かめられないことを分けてお伝えします。


最初にお断り: 高専の「留年率」の全国統計は存在しません

調べた結論から書きます。全国の高専の留年率(原級留置率)を集計して公表しているデータは、文部科学省にも高専機構にも見当たりませんでした。

  • 文部科学省「学校基本調査」には、そもそも留年(原級留置)の調査項目がありません
  • 高等学校の留年データがある「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」は、調査対象が高等学校までで、高専は含まれていません
  • 高専機構は「就職・進学データ資料」を公表していますが、掲載されているのは就職率・進学率・大学編入状況で、留年者数は含まれていません

ネット上には「高専の留年率は3.7%」といった具体的な数字が流通しています。その出典とされる文部科学省のページを確認しに行きましたが、現在は閲覧できず、一次資料としての裏づけが取れませんでした。当サイトでは、確認できない数字は書きません。

なお、高専機構が留年者・退学者に関する調査を内部で実施していること自体は、文部科学省による機構の中期目標期間実績評価書から確認できます。ただし、その集計結果は公表されていないようです。


確かめられること: 中途退学率は年2.08%

留年率とは別に、中途退学率は文部科学省が毎年公表しています。 高専も調査対象に含まれています。

年度 中途退学者数 中途退学率
令和4年度 1,209人 2.16%
令和5年度 1,183人 2.09%
令和6年度 1,166人 2.08%

3年間ほぼ横ばいで、わずかに下がっています。同じ調査で休学率も公表されており、令和6年度は1.53%(861人)でした。

高校と並べるとどうなるか

比較対象として、高等学校の数字を同じ令和6年度で並べます。

指標 高専 高等学校
年間の中途退学率 2.08% 1.4%
年間の原級留置(留年)率 公表データなし 0.3%

高専の中退率は高校の約1.5倍です。「明確に高い」とまでは言えませんが、「同じ」でもありません。

高校側の留年率0.3%は、内訳を見ると課程によって大きく違います。全日制普通科は0.1%、工業科などの全日制専門学科は0.2%である一方、定時制は1.5%、通信制は1.0%です。つまり全日制の高校で留年するのは、統計上かなり珍しい出来事だということです。高専の留年がそれより多いという実感は、おそらく正しいのですが、それを裏づける全国数値は現状ありません。

5年間でどれくらいになるのか

年2.08%が5年間続くと仮定して単純に積み上げると、5年間で約10%になります。100人で入学したクラスから、10人前後が卒業までに抜ける計算です。

ただしこれはあくまで機械的な計算です。学年によって退学の起きやすさは違うはずですし、公表データは学年別の内訳を示していません。「半分が退学する」というのは明確な誇張ですが、「1割前後は動きがある」と見ておくのが実態に近いでしょう。

※ この調査の「学生数」には留学生・別科・専攻科の学生も含まれ、本科1〜3年生も対象に含まれます。回答率は令和6年度で90.4%です。


「何年生が危ないか」——ここから先はデータではありません

ここまでが公表データで言えることです。以下は各校の説明や在学生の経験として語られている内容で、統計的な裏づけはありません。参考情報として読んでください。

2年生・3年生で専門科目が増える

1年生は一般科目(数学・英語・国語・理科)が中心で、中学校の延長に近い構成です。2年生以降、専門科目(力学、電気回路、プログラミングなど)の比重が増え、内容も高度になります。ここで低学年の数学・物理につまずいていると、挽回が難しくなる——というのが、多くの高専が入学前の説明で伝えている注意点です。

4年生・5年生は「単位不足」より「卒業研究」

高学年では卒業研究(研究室配属)が始まります。この時期に卒業できない場合、テストの点数ではなく卒業研究や論文の提出が理由になることが多いとされています。

学科系統によって留年しやすさが違うという話も見かけますが、学科別の留年率を公表しているデータは見つかりませんでした。当サイトでは学科別のリスク表は掲載しません。


「赤点は60点未満」は全校共通ではありません

「高専の赤点は60点。だから留年しやすい」という説明をよく見かけます。しかしこれは法令で決まった全国共通のルールではなく、各校が学業成績評価規程などで独自に定めているものです。

実際に国立高専4校の規程原文を確認したところ、こうなっていました。

学校 単位認定の基準
新居浜工業高専 全学年60点以上
苫小牧工業高専 全学年60点未満で再試験対象
和歌山工業高専 全学年60点以上
石川工業高専 第1〜3学年は50点以上、第4〜5学年は60点以上

4校中3校は全学年60点ですが、石川高専は低学年を50点としています。志望校の基準は、その学校の規程を直接ご確認ください。 多くの高専は「学業成績評価規程」「進級・卒業認定に関する規程」といった名前で公式サイトに掲載しています。

なお、赤点を取っても再試験(追試)や単位追認試験といった救済措置は各校に用意されています。留年が確定するのは「追試を含めても必要な単位が揃わなかった」場合です。


留年した場合の学費と、就学支援金の落とし穴

1年分の追加費用

国立高専の授業料は年額234,600円です。留年すると、この1年分がそのまま追加になります。寮に入っている場合は寮費も1年分増えます。

当サイトが集計した国立51校の寮費(食費込みの月額)は、中央値48,850円、レンジは27,258円〜62,616円で、42校が4〜6万円台に収まっています。年額に直すと概ね33万〜75万円、中央値なら約59万円です。

費用項目 金額(1年分)
授業料 234,600円
寮費(国立51校の中央値・食費込み) 約586,000円
合計 約82万円

自宅通学なら授業料の23万円ほど、寮生なら80万円前後——というのが、留年1年ぶんの追加負担の目安です。

就学支援金は「3年分」で打ち切られます

見落とされがちなのがこちらです。高等学校等就学支援金の対象になるのは、高専では第1〜3学年だけです。そして支給期間には36か月(3年分)という上限があります。

つまり、低学年で留年して在学が3年を超えると、超えた期間は就学支援金の対象外になります。授業料の全額が実費に戻るということです。

令和8年度からは所得制限が撤廃され、世帯年収にかかわらず支給されるようになりました。国立・公立高専の支給限度額は年額234,600円=授業料と同額、私立高専は457,200円です。所得の心配はなくなりましたが、36か月という期間の上限は変わっていません。

4〜5年生はもともと就学支援金の対象外で、「高等教育の修学支援新制度」(所得要件あり)に切り替わります。学費全体の見通しは高専の学費まとめ|全58校の学費一覧で解説しています。


「高専中退=中卒」は誤りです

退学を考えるとき、いちばん気になるのが学歴の扱いだと思います。ここには明確な誤情報が流通しているので、正確にお伝えします。

高専の第3学年を修了していれば、大学入学資格が得られます。 学校教育法第90条第1項の「通常の課程による十二年の学校教育を修了した者」に該当するためで、文部科学省も公式ページで「高等専門学校の3年次を修了した者(法第90条第1項)」と明記しています。

つまり、

  • 3年修了後に退学 → 大学受験ができます。高校に入り直す必要はありません
  • 1〜2年で退学 → この資格はありません。高校への転入学、または高等学校卒業程度認定試験の合格が必要です

「高専を中退すると中卒扱いになる」という説明は、少なくとも3年修了者については誤りです。

退学後の主な進路

1. 高校への転入学 学校教育法施行規則により、校長が「相当年齢に達し、当該学年に在学する者と同等以上の学力がある」と認めた場合に編入学が可能です。低学年での退学ではこのルートが中心になります。受け入れの可否・時期は学校によって異なるため、転入希望先に直接ご確認ください。

2. 高等学校卒業程度認定試験 高校に通わずに大学受験資格を得るルートです。3年修了前に退学した場合の選択肢になります。

3. 就職 3年修了後であれば「高校卒業と同等以上の学力がある」と扱われる場面が多くなりますが、企業の応募資格は各社が独自に定めるものです。「高卒以上」の求人に応募できるかどうかは、応募先に個別に確認するのが確実です。


留年を避けるために現実的にできること

データではなく一般的な対策になりますが、高専の教員や在学生が繰り返し挙げるのは次の3点です。

1. 低学年の数学と物理を落とさない 1〜2年生で学ぶ数学(微分積分など)と物理は、専門科目すべての土台です。ここでのつまずきは高学年まで尾を引きます。

2. 提出物を期限内に出す 高専では実験レポートや課題が成績に直結します。内容が不完全でも、未提出よりは大幅にましです。

3. 早めに相談する 多くの高専にはクラス担任やアドバイザー教員の制度があります。単位が危ういと分かった時点で相談したほうが、打てる手は多くなります。


まとめ

  1. 高専の留年率の全国統計は存在しません。 ネット上の「3〜4%」「3.7%」といった数字は、一次資料の裏づけが取れませんでした
  2. 中途退学率は公表されており、令和6年度は2.08%(1,166人)。高校の1.4%の約1.5倍です
  3. 5年間で単純に積み上げると約10%。「半分が退学」は誇張ですが、1割前後の動きはあります
  4. 「赤点60点」は全校共通ではありません。 石川高専は低学年50点。志望校の規程をご確認ください
  5. 留年の追加負担は自宅通学で約23万円、寮生で約82万円。加えて就学支援金は36か月で打ち切られます
  6. 高専3年修了者には大学入学資格があります。「中退=中卒」は誤りです

高専は高校というより「小さな大学」に近い学校です。手取り足取り面倒を見てもらえる環境ではありませんが、その分の自由もあります。不安を数字で確かめたうえで、判断していただければと思います。


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