結論: 情報系の倍率は、実際に5系統でいちばん高い
「情報系の学科は人気で倍率が高いから、うちの子には厳しいのでは」——学科選びの相談で、保護者の方からよくいただく心配です。
当サイトでは、全58校の入試結果ページ・出願状況PDFを一次資料から集め直し、学科系統別の志願倍率を集計しました。結果は次のとおりです。
| 学科系統 | 志願倍率 | 志願者数 | 募集人員 | 対象学科数 |
|---|---|---|---|---|
| 情報系 | 1.83倍 | 2,038人 | 1,112人 | 25学科 |
| 化学・生物系 | 1.75倍 | 1,386人 | 792人 | 20学科 |
| 機械・材料系 | 1.53倍 | 2,183人 | 1,424人 | 36学科 |
| 建設・建築系 | 1.44倍 | 1,437人 | 1,000人 | 25学科 |
| 電気・電子系 | 1.42倍 | 2,263人 | 1,592人 | 39学科 |
情報系が1.83倍で最も高く、電気・電子系の1.42倍が最も低いという結果でした。「情報系=高倍率」という通説は、少なくとも学科別に募集している高専に限れば、データと整合しています。
この順位は堅牢です。35校のうちどの1校を集計から抜いても、情報系が1位・化学・生物系が2位・機械・材料系が3位という並びは変わりませんでした。ただし建設・建築系と電気・電子系の差(1.44倍と1.42倍)は誤差の範囲で、抜く学校によって順位が入れ替わります。この2つは「同水準」と読んでください。
商船系(3学科・1.99倍)と、経営・ビジネス系などを含むその他(6学科・1.61倍)も集計していますが、対象学科数が少なく、1校の増減で倍率が大きく動きます。参考値として扱ってください。全154学科をならした全体の志願倍率は1.58倍でした。
集計できたのは58校中35校です
この記事でいちばん正直にお伝えしたいのは、そもそも「系統別倍率」を計算できる高専は全体の6割しかないということです。
| 学校数 | |
|---|---|
| 学科系統別に集計できた | 35校 |
| 一括募集のため系統別の数値が存在しない | 18校 |
| 公式サイトからデータを取得できなかった | 5校 |
近年、多くの高専が一括募集に移行しました。創造工学科・総合理工学科・ものづくり工学科といった大きな1つの学科でまとめて募集し、コースや専門分野は入学後に決める方式です。苫小牧・釧路・八戸・秋田・鶴岡・茨城・長野・福井・米子・津山・高知・有明・北九州・鳥羽商船の各高専と、東京都立産技・大阪公立大学・神山まるごと・国際高専がこれにあたります。
これらの学校では、入学の時点で系統が決まらないため、系統別の倍率という数字がそもそも存在しません。「機械系の倍率」を知りたくても、機械系という募集枠がないのです。志望校が一括募集なら、系統別の倍率は判断材料になりません。学校全体の倍率を見てください。
残る5校(一関・仙台・大島商船・阿南・近畿大学)は、公式サイトが当サイトのアクセスを拒否しているため取得を見送りました。各校の公式サイトを直接ご確認ください。
情報系が高いのは「枠が少ないから」ではありません
倍率が高い理由には「志願者が多い」と「枠が小さい」の2通りがあり、両者は意味がまったく違います。
情報系の場合は前者です。募集人員1,112人は5系統で3番目の規模で、決して小さくありません。それでも志願者2,038人が集まった結果としての1.83倍です。近年、多くの高専が情報系学科の新設・改組を進めて受け皿を広げてきましたが、それを上回るペースで志願者が増えている、という読み方になります。
一方、化学・生物系の1.75倍は募集人員792人と5系統で最小の枠に対する数字です。枠が小さい系統は、志願者数が少し動くだけで倍率が大きく振れます。同じ「高倍率」でも、情報系のそれとは性質が違います。
対照的なのが電気・電子系です。募集人員1,592人は5系統で最大ですが、志願者2,263人にとどまり1.42倍。枠の広さが倍率を押し下げている典型です。
この数字の限界: 学校ごとに数え方が違います
集計しながら分かったことですが、志願者数の数え方は高専ごとにバラバラです。
- 推薦で不合格になり学力選抜を受け直した人を、2回分として数える学校
- 同じ人を1人として数える学校(鈴鹿高専など)
- 推薦の「合格者数」と学力の「志願者数」を足して全体志願者数としている学校(大分高専)
- 志願した学科ではなく、最終的に合格した学科で計上している学校(旭川高専)
この違いは学校によっては1〜2割に達し、系統間の差(1.42〜1.83倍)と同じくらいの大きさです。そこで本記事では、各校が方式別に公表している志願者数を足し上げる方法に統一したうえで、次の2つの検証を行いました。
- 公表されている学科別合計を使う方式に切り替えても、5系統の順位は変わらないこと
- 各学科の倍率を「その学校の平均倍率」で割った校内相対倍率——学校ごとの数え方の癖が完全に相殺される指標——でも、順位が変わらないこと
どちらでも順位は同じでした。個々の数字の絶対値は学校間で厳密には比較できませんが、系統の順序は信頼してよい、というのが結論です。
倍率=難易度ではありません
そのうえで、あらためてお伝えしたいのは、倍率の高低をそのまま「入りやすさ・難しさ」と読み替えないでほしいということです。
- 募集枠の大小の影響が大きい。 上で見たとおり、倍率は志願者の多さだけでなく枠の広さで決まります。
- 地域事情の影響を受ける。 同じ系統でも、都市部の学校か、周辺の中学卒業者数が減っている地域かで倍率は大きく変わります。系統別の平均は、あくまで全国をならした参考値です。
- 志願倍率は実際の競争よりゆるやかに出ることが一般的。 志願者には他校との併願者なども含まれるためです。
倍率という数字の性質(志願倍率と実質倍率の違い、単年で跳ねる傾向など)は、学校別の倍率を一覧にした高専の倍率まとめ|全58校の代表倍率と「倍率の正しい読み方」で詳しく解説しています。
また、学校や学科によっては志願者が定員に満たない年もあります。ただし、倍率が低いことは教育水準の低さを意味しません。定員規模や地域の生徒数の影響が大きい数字であり、倍率の低い学校・学科にも就職や進学で高い評価を受けているところは多くあります。
学科選びへの示唆: 倍率で避けるのではなく、学びたい内容で選ぶ
今回のデータから、保護者の方に持ち帰っていただきたい結論は3つです。
第一に、系統による差は思ったほど大きくありません。 最高の情報系1.83倍と最低の電気・電子系1.42倍の差は、志願者100人あたりでいえば数十人の違いです。「この系統だけ極端な狭き門」という状況ではありません。
第二に、志望校が一括募集なら系統別倍率は関係ありません。 58校中18校がこれにあたります。志望校の募集単位がどうなっているかを、まず学校検索でご確認ください。
第三に、倍率で系統を選ぶのは、5年間の学びを選ぶ基準として弱すぎます。 高専は5年間、同じ専門分野を深く学ぶ学校です。入り口の0.4倍の差よりも、お子さんが5年間続けたいと思える分野かどうかのほうが、はるかに重要です。まずは分野から探すで各系統の学びの内容を親子で眺めてみてください。
なお入試方式そのものの基礎(推薦選抜と学力選抜の違い、方式別の枠の確認方法)は入試ガイドにまとめています。実際の出願では、必ず志望校の募集要項で方式別の枠をご確認ください。
まとめ
- 学科別に募集している35校154学科を集計すると、志願倍率は情報系1.83倍が最高、電気・電子系1.42倍が最低でした。
- この順位は、どの1校を除いても変わりません。ただし建設・建築系と電気・電子系は同水準です。
- 情報系が高いのは枠が小さいからではなく、枠を広げてもなお志願者の増加が上回っているためです。
- 全58校のうち18校は一括募集で、系統別の倍率という数字がそもそも存在しません。
- 学科は倍率で避けたり選んだりせず、学びたい内容で選ぶことをおすすめします。
出典・集計方法
各高専が公式サイトで公表している入試結果・出願状況(大半が令和8年度=2026年度入試、一部の学校は最新の公表が令和7年度)を、当サイトが一次資料から個別に収集して集計しました。収集した501行の元データはGitHubリポジトリで公開しています。
志願者数は、各校が選抜方式別に公表している値の合計を用いました(方式別の内訳が非公表の場合は、公表されている学科別合計を用いています)。募集人員は当サイトの学校データベースに登録された各学科の入学定員です。学科の系統区分も同データベースの分類に従っています。





